届出で名前や住所は知られる?公表のしくみと情報公開請求
風営法には、届出をした人の名前や住所を公表する決まりはありません。ただし、届出書は警察が持つ役所の文書なので、誰でも情報公開を請求でき、どこまで出すかは役所が判断します。埼玉県の答申第118号(2007年)では、名前と事務所の所在地は伏せる対象になっておらず、事務所を「自宅」と書いた届出では住所の欄まで開示すべきと答申されました。
風営法に「公表」の決まりはない
風営法と施行規則には、映像送信型性風俗特殊営業の届出をした人の名前や住所を公表する決まりはありません。警察から家族や勤め先に知らせる決まりもありません。
ただし、届出書と添付書類は、警察(公安委員会)が受け取って持っている役所の文書です。役所の文書は、情報公開の請求の対象になります。「公表」は役所が自分から広く知らせること、「開示(公開)」は請求した人に役所が文書を見せることで、別のものです。身バレを考えるときは、この「開示」のほうを知っておく必要があります。「ばれない」とは言い切れない、というのが出発点です。
役所が持つ情報の中身も知っておくと、判断しやすくなります。今の届出書(施行規則の別記様式第31号)には、次の欄があります。
- 名前、住所、電話番号、本籍(国籍)、生年月日
- 広告や宣伝で使う呼び名(呼称)、事務所の所在地と電話番号
- URLなど、他人のサーバを使う場合はその設置者の名前と住所
- 営業を始める予定の日
これに、住民票の写しや、事務所を使う権利を示す書類などが添付されます(添付書類の内閣府令13条)。
情報公開の請求のしくみ(大阪府の場合)
大阪府では、大阪府情報公開条例によって、誰でも府の行政文書の公開を請求できます(6条)。公安委員会と警察本部長も、この条例の「実施機関」に入っています(2条2項)。請求を受けた役所は、原則として請求から15日以内に、公開するかどうかを決めます(14条。延長あり)。
どこまで出すかは、条例の「公開してはならない情報」「公開しないことができる情報」に当たるかで決まります。届出書にかかわりそうな部分は次のとおりです。
| 条文 | 中身(要点) |
|---|---|
| 9条1号 | 住所など、 |
| 8条2項 | 公安委員会・警察本部長は、 |
| 11条 | 公益上とくに |
| 17条 | 公開を |
注意したいのは、9条1号が「事業に関する情報」を個人の情報から外している点です。届出書の欄のうち、何が個人の生活の情報で、何が事業の情報に当たるかは、請求ごとに役所が判断します。どの欄が伏せられるかは、前もって決まっていません。
埼玉県の答申第118号で示された判断
映像送信型の届出書が実際に情報公開の請求を受けた例として、埼玉県情報公開審査会の答申第118号(2007年8月20日)があります。埼玉県のホームページ(情報公開審査会の答申の一覧)で全文が公開されています。流れは次のとおりです。
- 2005年3月、事業を営む個人が、蕨警察署を経て、埼玉県公安委員会に営業開始届出書を出した。
- 2006年11月、ある人が「映像送信型性風俗特殊営業の届出書」の開示を請求した。埼玉県警察本部長は、この届出書を含む29件を対象として特定した。
- 2006年12月、この届出書について、一部を伏せて開示する決定がされた。29件とも、伏せる項目は同じだった。
- 請求した人は、29件のうち、事務所の所在地の欄に「自宅」と書かれた1件についてだけ、住所の欄も開示すべきだとして審査請求(不服の申立て)をした。
- 2007年8月、審査会は、その住所の欄を開示すべきだと答申した。
最初の決定で伏せられた部分と、伏せられなかった部分は次のとおりです。
| 届出書の部分 | 2006年12月の決定 |
|---|---|
| 届出者の | 伏せる |
| 届出者の | 伏せる |
| 金融機関名・口座番号、 | 伏せる |
| 警察の | 伏せる |
| 上の | 開示する |
審査会が検討したのは、「自宅」の書き方の点だけです。審査会は、「自宅」だけでは事務所の所在地を示したことにならず、「自宅」が指す住所の欄と合わせて初めて事務所の所在地の情報になる、と考えました。そのうえで、本来は住所の欄は個人を特定する情報として伏せられるものだが、この届出では届出者自身が事務所の所在地として住所の欄を指しているので、事務所の所在地としての情報に当たる、としました。事務所の所在地は開示すると決めていたのだから、その住所の欄も開示すべきだ、という結論です。
なお、請求した人は、対象の業者が架空請求のサイトを運営していると主張し、業者を特定したいという趣旨を述べていました。答申は審査会の意見で、そのあとの最終的な決定(裁決)の内容は、このページでは確認できません。また、当時の届出書(添付を含む)には、今の様式にない金融機関名・口座番号が含まれていて、様式は今と違っていたと考えられます。
大阪府で同じ判断になるとは限らない
答申第118号は、埼玉県の条例にもとづく、埼玉県の審査会の判断です。大阪府への請求は大阪府情報公開条例で判断されるので、同じ結論になるとは限りません。大阪府で同じ種類の届出書を扱った答申は、今回の調べでは見つけられませんでした。
ただ、大阪府の条例も、個人の情報から「事業を営む個人の当該事業に関する情報」を外しています(9条1号)。条文の作りからは、事務所の所在地のように事業にかかわる欄は、9条1号の個人の情報としてではなく、8条2項(正当な利益を害するか、個人の生命・身体・財産などの保護に支障があるか、など)で判断されると読めます。実際にどう判断するかは、請求を受けた公安委員会や警察本部長が決めます。事務所を自宅にすると、自宅の住所が「事務所の所在地」になる点は、埼玉の例と同じです。
自宅を事務所にするときの考え方
届出書の「事務所」は、営業活動の中心となる一定の場所のことで、事務所といえる場所がないときは住所がその代わりになります(解釈運用基準 第18中3(2)・4(3)、様式第31号の備考3)。自宅で配信していて、ほかに場所がない場合は、自宅の住所を事務所の所在地として書くことになります。
自宅を事務所にすると、次の場面で自宅の住所が人に伝わる可能性があります。
- 情報公開の請求で、事務所の所在地の欄が開示されたとき
- 届出確認書の写しを配信サイトや取引先に出すとき(確認書には事務所の所在地が載ります)
- 家族名義の家や賃貸の部屋で、名義人や貸主の承諾書を頼むとき(相手に届出のことが伝わります)
自宅とは別に事務所を借りても、届出書の住所の欄と住民票の写しには自宅の住所が載ります。埼玉の例では、ほかの28件の住所の欄は、最初の決定で伏せられ、審査請求の対象にもなりませんでした。借りた場所を事務所にできるのは、そこが実際に営業の中心になる場合です。一方、別に事務所を借りれば、契約の費用と、承諾書などの書類の手間がかかります。費用と手間と、住所が出ることへの不安の大きさを比べて決めることになります。場所ごとの書類は事務所の場所の記事にまとめています。
なお、届出を受けた公安委員会は、決められた事項を国家公安委員会に報告し、ほかの都道府県の公安委員会にも伝えられます(風営法41条の3第1項1号)。これは警察どうしの情報の共有で、公表ではありません。
家族・勤め先・住民税のこと
先に書いたとおり、警察が届出のことを家族や勤め先に知らせる決まりはありません。ただし、公安委員会は、法律の施行に必要な範囲で、営業について報告や資料の提出を求めることがあります(風営法37条1項)。書類の内容について、警察署から届出をした本人に連絡が来ることもあるので、電話や郵便を受ける時間帯や場所は前もって考えておくと安心です。
副業が勤め先に知られるきっかけとしてよく言われるのは、届出ではなく住民税です。住民税や確定申告のことは、税理士かお住まいの市区町村に確認してください。警察から捜査や呼び出しを受けているなど、すでに問題になっている場合や、情報が出たことでトラブルになった場合は、弁護士に相談してください。警察署から届出を出すよう言われた方のご相談は、弊所でお受けします。
行政書士には、業務で知った秘密を漏らしてはならない義務があります(行政書士法12条)。弊所では、お送りする郵便物を中身の分からない封筒にしています。
よくある質問
Q届出をすると、名前がインターネットで公表されますか?
風営法と施行規則には、届出をした人の名前や住所を公表する決まりはありません。ただし、届出書は役所の文書なので、情報公開の請求があれば、どこまで出すかを役所が判断します。埼玉県の答申第118号の例では、届出者の名前は伏せる対象に入っていませんでした。
Q情報公開の請求があったら、自分に知らせは来ますか?
大阪府情報公開条例では、公開を決める前に、文書に情報が載っている人へ意見を出す機会を与えることが「できる」とされています(17条)。決められた場合を除き、知らせが来るとは限りません。反対の意見書を出した人の文書を公開するときは、決定から公開まで少なくとも2週間あけ、その人に知らせます。
Q本名ではなく活動名で届出できますか?
届出書には「氏名又は名称」を書くことになっていて(風営法31条の7第1項1号)、個人なら住民票の写しも付けます。広告や宣伝で使う呼び名は、別に「呼称」の欄に書きます。事実と違う内容の届出書を出すと、罰則の対象になります(風営法53条6号)。
Q家族に知られずに届出できますか?
届出をしたことを、警察から家族に知らせる決まりはありません。ただ、家族名義の家を事務所にするときは名義人の承諾書がいるので、その人には届出のことが伝わります。事務所の場所によって伝わる相手が変わるので、場所を決める前に考えておくと安心です。
書類づくりと
大阪府内の警察署に出す映像送信型の届出を、1件74,000円(税込)でお引き受けします。警察署の手数料3,400円は別です。報酬は届出確認書をお渡ししてからの後払いです。確認書が出なければ報酬はいただきません(ご都合で取りやめた場合や、事実と違うことをお伝えいただいていた場合などを除きます)。
参考にした資料
- 埼玉県 情報公開審査会 答申第118号「映像送信型性風俗特殊営業の届出書」の部分開示決定(平成19年8月20日)
- 大阪府情報公開条例(2条・6条・8条・9条・11条・14条・17条)
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(e-Gov)31条の7・37条・53条
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則(e-Gov)別記様式第31号・第33号
- 風営法に基づく許可申請書の添付書類等に関する内閣府令(e-Gov)13条
- 警察庁 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(令和8年7月1日)第18中3・4
- 行政書士法(e-Gov)12条
記事の内容は更新日時点のものです。手続きの細かい運用は、申請先の警察署・役所で確認してください。
